Whole Earth Catalog:全地球カタログ

OFFICE TOSHI

2009年05月27日 12:17



ジョブス氏がスピーチの中で述べていたWhole Earth Catalog:全地球カタログを調べてみました。

それはまるでグーグルが出る35年前の時代に遡って出された
   グーグルのペーパーバック版とも言うべきもので、理想に輝き、
   使えるツールと偉大な概念がそれこそページの端から溢れ返って
   いる、そんな印刷物でした。





アメリカの編集者スチュアート・ブランド氏の手になるこの雑誌は、1968年から1972年にかけて出版されました。(その後、断続的に続編が出ています)
「Access to Tools(道具へのアクセス)」というコンセプトを掲げ、野外生活や自然科学の知識から精神世界まで、膨大な情報(それらすべてをひっくるめて「道具」と定義している)へのアクセス方法を集めた本書は、60年代から70年代の激動の時代を生きるための、「カタログという形態」を借りた知恵の集積であり、それゆえに 1960~70年代のヒッピーカルチャーに大きな影響を及ぼしたのです。(ちなみに、ラブ&ピースを謳ったウッドストック・ロック・フェスティバルが開催されたのも、ちょうどこの頃(1968年8月15日~17日))

本書の目的を、ブランド氏はこういいます。

   この本は僕たちを「消費」に向かって駆り立てるためのものではなく、
   僕らが地球という惑星の上でヒトとして自立して生きるための
   手がかりを提供しようとしている

表紙の地球の写真が、そのコンセプトを物語っていますね。

そして、その内容は、
  Understanding Whole Systems(全体システムの理解)
  Shelter and Land Use(シェルターと土地の利用)
  Industry and Craft(産業と手工芸)
  Communications(コミュニケーション)
  Community(コミュニティ)
  Nomadics(遊牧民)
  Learning(学習)

といったカテゴリーに分けられている。 

これらのカテゴリーについての様々な道具や書籍、情報などが紹介され、ひとつひとつのアイテムにスタッフの詳細なコメントとイラストがついていくのです。

ただし、無条件に何でも掲載されている訳ではありません。
そこには「Whole Earth Catalog」のこだわりの選定基準があります。

その基準とは
1. Useful as a tool,(道具として役に立つこと)
2. Relevant to independent education,(自立教育への関連性)
3. High quality or low cost,(高品質、もしくは低価格)
4. Not already common knowledge,(まだ一般的でない知識)
5. Easily available by mail.(郵便で容易に入手)

5の郵便で陽に入手というのは、通信販売で購入できるという意味なのでしょうね。

そこには明確な思想と壮大なコンセプトが存在します。
そのコンセプトに従って掲載されたアイテムは、新しいライフスタイル実践のために必要なツール(道具)。
本書に掲載されているものはすべて、ブランド氏たちの世界観を構築するためのツール群なのです。




そして、最後にジョブス氏は、こう述べています。

On the back cover of their final issue was a photograph of an early morning country road, the kind you might find yourself hitchhiking on if you were so adventurous.

最終版の裏表紙には、もしあなたが冒険好きならば、ヒッチハイク上で出くわすかもしれないようなまだ朝早い田舎道の写真がありました。

Beneath it were the words: "Stay Hungry. Stay Foolish." It was their farewell message as they signed off.

写真の下には、「ハングリーであれ、馬鹿であれ」と書かれていました。それらは、彼らが断筆する際のさよならのメッセージでした。

Stay Hungry. Stay Foolish.

ハングリーであれ、馬鹿であれ。

And I have always wished that for myself.

そして、私は、私自身そうありたいと望んできました。

And now, as you graduate to begin anew, I wish that for you.

そして今、卒業して新たな人生を始めるにあたって、あなた方にそれを望みたい。

Stay Hungry. Stay Foolish.

ハングリーであれ、馬鹿であれ。

Thank you all very much.

ありがとうございました。